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コミュニティガーデン with くさかのお家

コミュニティガーデンってご存知ですか?

直訳すると、「地域のお庭」。

行政が管理する“公園”ではなく、地域住民が主体となって作る“コミュニティガーデン“は、

 

植物との触れ合いや、それがもたらす癒しだけでなく、環境問題を学ぶ場、人と人が繋がる場など、様々な機能を持ち合わせているとして今注目されています。

 

この度satosatoでは、東大阪市にある放課後等デイサービスくさかのお家様より、「敷地内にある空き地を子どもたちが楽しく関われる場所にしたい」とのご依頼を受け、「くさかのお家コミュニティガーデン」のデザイン、そして施工に係るお手伝いさせて頂いています。

 

 

これまでは、畑として野菜栽培に取り組まれていたものの、なかなか管理が追い付かず、草が茂ってしまったり、空き缶やタバコのポイ捨てがあったりと、せっかくの緑が生まれる空間を活用しきれずにおられました。

 

今回のデザインにあたっては、

    四季の恵が楽しめる「自然体験」ガーデン

    多様な生きものの棲みかとなる「ビオトープ」ガーデン

    自然の恵みである落ち葉や草を土に戻し、野菜などを栽培しつづける「サステナブル」ガーデン

    国産材を使うことで里地里山を守り地球温暖化抑制に貢献する「木質循環」ガーデン

⑤ 地域の方との会話が生まれる「コミュニケーション」ガーデン

 

5つのキーワードをもとに、植物の選定や植栽レイアウト、使用する土や設置するプランターなどにも、ストーリーを持たせた提案させて頂きました。

【ストーリー① 自然体験ガーデン】

子どもたちが主体的に関わる自然体験となるように、できるだけ簡単に育てられ、年月が経過しても大きくなりすぎ管理が大変にならない特徴を持ち、四季を通した楽しみが多い自然(野菜や果物)を選定しました。

自分の手で「育てる・調理する・食べる」関わりを通して、自然と共に暮らす生活の一端を体験してもらえればとの思いを込めています。

 

年間を通じ自然と関わる中で、自然が好きと感じる子どもが増え、「なぜ?なに?」の学びが生まれる体験を通して、豊かな心や生きる力が育まれるような場作りを目指しました。

【ストーリー② ビオトープガーデン】

ビオトープとはドイツ語で「いろいろな生きものの棲みか」という意味です。

果樹園には、ジューンベリーやブルーベリー、キンカンなどの果樹が植わります。野菜畑にはジャガイモやダイズ、大根など旬の野菜が顔を出し、ハーブたちも畑に彩りを添えてくれます。それらの果樹や野菜には、実や葉っぱを求めてチョウやバッタ、鳥などの生きものがやってきます。害虫・害鳥に認定され嫌がられることの多い「畑の生きもの」たちですが、地球に一緒に生きる命(仲間)です。人以外の生きものの存在、命のつながりを感じ取れる

町中ではなかなかできない貴重な空間となります。

 

人が食べたくて植えている野菜や果物だけれど、その野菜や果物を育てることはチョウやバッタ、カマキリ、鳥、ミミズやダンゴムシなどの数えきれない生きものの繋がりを守る活動にもなること。人が美味しく食べる分も確保しつつ、他の生きものが生きる分をわけてあげられるような、人と生きものが繋がる優しい場所になってほしい願いを込めています。

【ストーリー③ サステナブルガーデン】

野菜や果樹を育てると、落ち葉、そして栽培種以外の勝手に生えてくる草(雑草というレッテルをはられた草)が生まれます。

これらはゴミでも敵でもなく、栄養たっぷりの土を作ってくれる宝物(パートナー)です。

satosatoでは、その場所で発生した草や落ち葉、さらには台所ででる野菜くずなどの有機物を微生物の力を借りて、土に戻す循環型農業を推進しています。無肥料無農薬で栽培し、虫や鳥に食べられても負けずに大きく、おいしくなる元気いっぱいの野菜や果物を育てます。

今回は、くさかのお家のスタッフの方々と一緒に、約3㎥の土づくりをしました。また、次回以降の土づくりに利用できよう、今後出てくる落ち葉や引き抜いた草などの宝物を保管できる木箱を、ガーデンの隅に設置しました。

 

自然の栄養を土に戻す「土つくり」から始めることで、生ゴミの削減になるだけでなく、その場所で人工的な肥料や薬の力に頼ることなく、安心安全な物を作り続けられるサステナブルな畑の姿を目指します。

【ストーリー④ 木質循環ガーデン】

果樹が植わる木製プランター、そしてブルーベリーの誘引に使う手製ラティスには、国産材である奈良県十津川村のスギとヒノキが使われています。

日本の木を取り入れ使うことは、木質資源の循環(木を育てる・木を伐る・木を使う・木を植える)を促進し、健全な山の環境を保つことに繋がります。

くさかのお家のコミュニティガーデンは、緑を生むだけでなく、少し離れた緑(山)の保全にも貢献しています。

さらに、木は体の中に地球温暖化の原因の一つである二酸化炭素を保存できる力を持っています。それは切り倒した後も変わらず保存されます。

コミュニティガーデンに取り入れた国産材によって、くさかのお家の皆さんが、施設を利用する中で排出する年間二酸化炭素量の約1割が削減でき、地球温暖化の抑制に貢献できました。

 

【ストーリー⑤コミュニケーションガーデン】

人の手が入り、活用しきれていなかった空間に新しい命が吹き込まれだすと、お散歩や買い物途中で畑の前の道を歩かれる地域の方が、自然と足を止める魅力的な場所となります。木々が植えつけられ、野菜作りが始まれば、地域の方にとっても、花や果実・紅葉を楽しみ、やわらかい香りに心がほぐれる「憩いや癒し」の場になればと願いを込めています。

 

さらに、その自然の姿や、子どもたちの活動の様子が、地域の方と子どもたちをつなぎ、会話が生まれるコミュニケーションツールになるように植栽計画を行いました。

変貌を遂げていく「くさかのお家コミュニティガーデン」を前にした、代表の和多田様のお言葉がとても印象的でした。

 「コロナ禍で、多くの人がストレスを抱えている中、このガーデンを見て、立ち寄って、少しでも気持ちが晴れてくれたら嬉しい。」

 まさに、コミュニティガーデンが目的とする、“地域のお庭”=“みんなのお庭”

 コロナを機に、コミュニケーションの希薄化がますます深刻化していく中で、子ども、地域、自然が垣根なく繋がっていくコミュニティガーデンとなってくれることを願っています。